手嶋龍一

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ノンフィクション作品

『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』

 信頼を勝ち取る。それがスパイの本質。元情報部の作家、ジョン・ル・カレの父は、稀代の詐欺師だが、息子も信頼される才があって採用されたと著者は推測。  ル・カレがモデルにしたキム・フィルビーは、英露をまたにかけた男だが、猫かぶりゆえ二重スパイがばれない。

 キムの「赤い仲間」が「オット―」なら、そう呼ばれた日本人、尾崎秀実の仲間が、夜な夜な、銀座に現れるゾルゲ。

 柳並木で「思わずステップ」。著者の母は、「銀座を職場に選ぶ」ほど、戦前でも足取り軽くなる街を、スパイも闊歩。「ぞくぞくするほど素敵」。色気あるゾルゲを語る薄紫ドレスの令嬢、山本満喜子は、一緒に銀座通りをバイクで駆ける。

 戦後、美輪明宏も憧れた紫の麗人だけでなく、逮捕されたゾルゲは、女性を事件に巻き込むことはせず、守り通した。それもまた信頼、それとも愛。

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