手嶋龍一

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ノンフィクション作品

「魅力溢れる情報戦士たち」

 国家にとってのインテリジェンス(情報)の重要性を訴え、日本のヒューミント(人間を介した諜報活動)の不足に警鐘を鳴らした著者が、その担い手たるスパイ、インテリジェンス・オフィサー(情報戦士)の人間像に迫ったのが本書。副題は「インテリジェンス畸人伝」だ。

 本書に登場するスパイマスターのジョン・ビンガム、ダブルエージェントのキム・フィルビーら優秀な情報戦士は皆「人々を惹きつけてやまない人間的な魅力に溢れている。磁力を持つ者にこそ人は秘密を明かしたがるからだ」。一方で、詐欺と裏切りも彼らの宿命だ。彼らを生んだバックグラウンドにも本書は切り込む。

 英国には「寒い国から帰ってきたスパイ」のジョン・ル・カレ、「ジェームズ・ボンド」シリーズのイアン・フレミングら秘密情報部出身の作家たちがおり、情報当局と暗黙の共犯関係にあるという。ル・カレは、特定の状況のもとでは情報機関が民主主義を脅かしかねない存在になると警告し、「愛国心なるものを国家のふるまいを覆い隠す盾にしてはならない」と戒める。

 ITの発達は義憤に燃える個人が国家レベルの機密情報を白日の下にさらすことのできる時代を招来した。本書でも世界のVIPを震撼させた「パナマ文書」、ジュリアン・アサンジ、エドワード・スノーデンら「サイバースペースの叛逆者」が取り上げられる。情報戦の主戦場もサイバー空間に移りつつあるが、著者は「人間力を駆使して持ち帰る情報だけが、ダイヤモンドのような輝きを放つ」と断言する。

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