手嶋龍一

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ノンフィクション作品

「死の覚悟なき政治家は去れ」

著者の手嶋龍一氏は、国家の威信や思惑が衝突し熱を帯びる国際政治の舞台裏に踏み入り、核心に迫ることで知られる外交ジャーナリストだ。 NHKでワシントン支局長などを歴任し独立した現在も、精力的に取材と情報発信を行っている。本書は、人生を賭して政治に挑んだ辣腕政治家や外交官29人の素顔に迫るルポルタージュだ。

本書にはジョン・F・ケネディ氏やロナルド・レーガン氏など、米国史に名を残す政治家に加え、小泉純一郎氏や谷内正太郎氏ら日本の政治家や外交官も登場する。著者が力点を置くのは、死の覚悟を持って政治に取り組める人間であるか否かである。「いかに民主制の衣をまとっていても、多くの国々ではいまもなお、死の覚悟なき者が政に関わることを許さない」と論じる。謀殺の危険を知りつつもなお群集の只中に分け入る姿勢を崩さない「黒人初の米国大統領を目指す男]、バラク・オバマ氏には、その覚悟があると言う。

凶弾に倒れたレーガン元大統領は、息も絶え絶えの状態で執刀医に「あなた方がどうか共和党員であることを望みたいものですな」とジョークを飛ばしたという。タカ派の顔ばかりが際立った元大統領だが、「崇高なデモクラシーの理念を心から信じた人」であると、著者は高く評価する。

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