手嶋龍一

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スギハラ・ダラー

話の肖像画 インテリジェンス・ナウ<中>「小説はほとんど事実」

産経新聞 2010年2月17日掲載

--前作『ウルトラ・ダラー』は本格的な「インテリジェンス小説」として注目を集めた

手嶋 そもそもインテリジェンス小説と呼んだのは私や出版社ではなく、(元外交官で文筆家の)佐藤優(まさる)氏。佐藤氏は前作の中に、近い将来起こりうるインテリジェンスが込められており、事実に粉をふりかけたノンフィクションノベルやドキュメンタリー小説とは違うとして、「冷戦後の日本に初めて登場したインテリジェンス小説」と見立てた。ただ、佐藤氏と対談した際、「147カ所の付箋(ふせん)をした」といってあれこれ情報の機微に触れる「探り」を入れられたのには参りましたが(笑)。

--どこまでが事実か小説か、一般読者には判別しがたいところがある

手嶋 例えば前作では、マカオや中国・瀋陽の銀行が北朝鮮絡みのマネーロンダリングを行っている疑惑に触れましたが、出版後(平成17年)、実際に米国はマカオの銀行、バンコ・デルタ・アジアにあった北朝鮮資金を凍結しています。このため、「日々のニュースが物語の出来事を追いかけている」と評されました。インテリジェンスとは単なる機密情報ではなく、やがて起こるに違いない近未来の事柄を照射する力を持っていなければいけない。その点で、私の書いた小説はほとんど事実といっていいでしょう。

--人民元の変動相場制移行など、今作にも大量の「予言」が

手嶋 今作を読んで、気の早い人は人民元に大枚をはたくかもしれませんが、自己責任で、と申し上げたい(笑)。対中関係についていえば、日本はやがて、経済的には中国に抜かれるでしょう。ただ、背後には日米同盟という政治的財産も控えており、どう存在感を確保していくか、それはまさに日本がインテリジェンスをどう活用していくかに懸かっています。(三品貴志)

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