手嶋龍一

手嶋龍一

手嶋龍一オフィシャルサイト HOME » 著作アーカイブ » 2007年

著作アーカイブ

「担うべきは日米同盟『再建』」

『産経新聞』2006年7月12日掲載インタビュー記事

東アジア外交をどう再建するかが総裁選の対立軸だとする日本メディアの説明には、明確に異を唱える。  再建すべきは日米同盟だ。一般的には、日米両首脳の関係が緊密なので、日米同盟が戦後今ほどよい時期はないと説明される。しかし、ワシントンを拠点に活動していると、首脳関係と日米同盟が混同されているのがわかる。

日米同盟の長期的な問題として、共通の東アジア戦略がない。共通の戦略なき同盟は衰退していくというテーゼが欧州にある。東アジア戦略がない日米同盟は非常に脆弱だ。中期的には、米国は率先して日本の国連安保理常任理事国入りに道を開けようとしない。米国は東アジアを代表する国は中国だけだと事実上認めているのだ。短期的には首脳レベルを除くカウンターパート同士の対話が途絶えがちだ。

北朝鮮のミサイル発射は、日米同盟が十分に機能しなかったということを世界に知らしめた。

発射の可能性が出たときから日米は同盟して北朝鮮に警告してきた。しかし、両首脳がメンフィスでプレスリーに興じていたのを、まさに北はあざ笑うように発射ボタンを押したといえる。

米側の責任あるインテリジェンス関係者によると、北朝鮮のミサイル発射のXデーを米側はピンポイントで知らなかった。もし知っていたら両首脳をメンフィスに絶対行かせなかったという。

だから、今の日米同盟はまさに「プレスリー同盟」といえる。中国へ厳然とした態度を取るにも日米同盟が機能していないと意味がない。そのためにも日米同盟の根本的な再建が求められる。

同時に、日朝平壌宣言には、ミサイル発射凍結は申し訳程度にしか書かれておらず、拉致問題は明言されていない。次期首相は、小泉路線の禅譲を考えず、日本国民を納得させる条項がない平壌宣言を明確に清算すべきだ。とくに、宣言にかかわった人は過去の誤りを認めることだ。

産経新聞

閉じる

ページの先頭に戻る