手嶋龍一

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手嶋龍一氏に聞く「日本版NSC作れど、茨の道 省庁の壁を破る仕組みなし」

日本にあっては、内閣の安全保障機能を支える中核に大きな欠陥がある。官僚組織を横に貫くシステムがなく、それが武器なき戦いといわれるインテリジェンス分野の弱さとなっている。

内閣には各省から重要な情報が集約されるタテマエになっている。だが各省は独自の情報を開示してまで、自らの手の内をさらそうとしない。そのため、内閣は、各省の情報を比較・分析して、その真贋を見極めることが難しくなる。

その結果、内閣に上がってくる情報はお粗末なものになっている。共著『インテリジェンス 武器なき戦争』で、外務省ロシア担当の分析官だった佐藤優氏は、一級の情報は外務省に止め、内閣調査室に送る情報は、新聞情報に色づけしたものに「取扱注意」の判を押して付加価値を高めていたという。

各省から情報を吸い上げ、横断的な評価を下す。そして総理大臣の決断に役立てる。こうしたインテリジェンス機能を発揮するのはいかに至難の業であることか。英国は、JIC=合同情報委員会のもとで、「MI6」など4つの主要情報機関から上がってくる情報を選りすぐり評価する、わずか数十人の少数精鋭の評価スタッフを抱えている。彼らには、必要なら各情報機関に分け入り、すべてにアクセスする権限を与えている。インテリジェンス機関の互いの障壁の壁を打ち破るこの機能こそが核心だ。

安倍晋三政権は、安全保障の強化の柱として、日本版NSCの設立を目指している。専従スタッフを10~20人置くとしている。だが、彼らは各省庁から出向して今も内閣にいる要員であり、縦割りの弊害を突破する権限が与えられるわけではない。総理のほか誰も望んでいないからだ。

新たなスタッフが優れたインテリジェンス報告をまとめたとしても、果たしてそれを国家の舵取りに活用できる政治指導者が存在するのか。インテリジェンス大国日本の先行きは、茨の道だろう。(談)

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